アスベスト(石綿)事前調査の「結果報告」でまず知っておくべきことがあります。報告様式は2026年(令和8年)1月1日に改正されています(令和7年厚生労働省令第111号)。ネット上の記入例には改正前の旧様式のまま解説しているものが少なくありません。本記事は2026年1月改正後の現行様式・現行制度に基づいて、報告義務の対象から、報告事項、電子報告の流れまでを一気通貫で解説します。

結論の要点は3つです。

自分の工事が対象か迷う場合は、先に報告義務チェッカーでどうぞ。

報告義務の対象になる工事

工事 基準
建築物の解体 解体部分の床面積合計80㎡以上
建築物の改修(リフォーム・設備交換等) 請負代金税込100万円以上(材料費・仮設費含む/事前調査費は除く)
特定の工作物(大臣が定めるボイラー・配管等)の解体・改修 請負代金税込100万円以上
鋼製の船舶 総トン数20t以上(石綿則に基づく報告のみ)

大事な注意が2つ。①これは**「報告」の基準であり、事前調査そのものは規模・金額を問わず必要です。②同一の元請が契約を分割しても合算で判定**されます(省令本則のみなし規定)。基準の数え方の詳細(税込・追加発注・分割発注)は100万円未満の工事の解説で扱っています — 境界の判定はあちらの記事、対象になった後の実務は本記事、という分担です。

なお、石綿が「無し」でも報告は必要です(厚労省リーフレットも「石綿が無い場合でも、『石綿無し』を報告することが必要!」と強調)。

報告するのは誰?いつまでに?

報告書に書く事項(2026年1月改正対応)

報告事項は石綿則4条の2第2項・大防法施行規則16条の11第2項で定められています。主な内容:

つまり新様式では、調査者の資格区分まで報告することになりました。無資格調査がそのまま表面化する構造です(資格の確認方法は資格解説の記事へ)。

新様式の項目別・記入ガイド

主要項目ごとの記入ポイントです(施行通達 基発1107第1号と、報告システムの利用者マニュアル(2026年1月版)に基づく)。

項目 記入のポイント
労働保険番号 元請事業者のもの。下請の番号ではない
工事の実施期間・作業開始日 2026年1月改正で作業開始「日」を記入する方式に。時期の幅ではなく日付で
床面積の合計/請負代金 解体は解体部分の床面積合計、改修等は税込の請負代金(材料費・仮設費含む/事前調査費は除く)
材料ごとの石綿使用の有無 選択肢は「有」「無」「有とみなす」。分析せず含有扱いにした建材は「有とみなす」を選ぶ(旧様式の「みなし」から名称変更)
事前調査を行った者 氏名に加え、修了した講習の区分(一般/特定/一戸建て等/工作物/船舶/その他)を選択 — 2026年1月改正の新設欄
石綿作業主任者 石綿含有建材の除去等の作業を行う場合に氏名を記入
作業時の措置 切断等の有無と飛散・ばく露防止措置を選択。「除じん性能を有する電動工具の使用」「その他の粉じん発散防止措置」の選択肢が2026年1月に追加

記入例のスクリーンショット付き解説は、公式の利用者マニュアル(基本操作編)が最も確実です。当サイトでも新様式ベースの記入例を順次追加します。

2006年9月1日以降着工の建物は報告事項が簡略化される

着工日を設計図書等の文書で確認して調査を終了した場合(2006年9月1日基準の解説)、報告事項は基本情報のみに限定されます(事業者情報・労働保険番号・実施期間・床面積または請負代金など。材料ごとの使用の有無や調査者資格関係は不要)。報告そのものは免除されません

電子報告の流れ(石綿事前調査結果報告システム)

報告は石綿事前調査結果報告システムから行います。1回の電子報告で、労働基準監督署(石綿則)と自治体(大防法)の両方に報告したことになるのが最大の利点です。

  1. GビズIDを取得する — プライム/メンバー/エントリーの3種いずれも利用可。エントリーは審査不要で即日発行ですが機能に一部制限があり、複数工事の一括申請はプライムのみです。継続的に報告する事業者はプライムの取得を推奨します
  2. システムにログインして入力 — 操作方法は公式の利用者マニュアル(基本操作編・詳細機能編)が公開されています
  3. 送信・控えの保存 — 登録が完了すると申請先の労基署・自治体で閲覧可能になります

一括申請用のCSVファイル仕様も2026年1月に変更されているため、独自ツールでCSVを作っている事業者は仕様の再確認が必要です。

書面(窓口)での報告も可能 — ただし二度手間

電子が原則ですが、書面での報告も法令上認められています(石綿則は様式第1号、大防法は様式第3の4)。ただし書面の場合は労基署と自治体の窓口それぞれに提出が必要です。よほどの事情がなければ電子報告が合理的です。

報告のあとに残る義務 — 報告して終わりではない

報告を忘れた・間違えた場合

労基署への不報告・虚偽報告は50万円以下の罰金(安衛法120条5号)、都道府県知事への不報告・虚偽報告は30万円以下の罰金(大防法35条4号)の対象です。工事開始前に気づいたなら直ちに報告を、着工後に気づいた場合は管轄窓口に相談してください。違反類型の全体像は罰則の解説へ。

よくある質問

Q. 下請だが、元請が報告してくれない。代わりに報告できる? システム上、下請による代行報告はできません。報告義務者は元請です。元請に報告義務(と罰則)があることを伝えてください。

Q. 調査の結果、石綿なしだった。それでも報告? 規模基準に該当すれば「石綿無し」として報告が必要です。

Q. 古い様式(2025年以前の記入例)を参考にしていい? 2026年1月1日に様式が改正され、調査者の講習区分欄などが追加されています。改正前の記入例をそのまま使うと項目が合いません。必ず現行様式・現行システムの画面に従ってください。

Q. 報告の控えは誰に見せる? 発注者への説明書面とあわせ、記録として3年保存します。発注者側も報告書の提出を求めることが公式に推奨されています。


出典(一次情報・2026年7月12日確認)

法令の確認日: 2026年7月12日(e-Gov現行条文・公式資料と照合)