結論を先に言います。

つまり「100万円未満だから報告も不要」と言えるのは、改修・特定工作物の金額基準に当てはまる工事だけです。そして報告が不要な場合でも、調査そのものと記録の義務は消えません。この混同は行政の公式FAQでも繰り返し注意されているポイントで、間違えると罰則の対象になり得ます。

「調査義務」と「報告義務」の対比表

事前調査 結果の報告
義務の範囲 全ての解体・改修工事(2021年4月〜) 一定規模以上のみ(2022年4月〜)
規模の基準 なし(面積・金額不問) 解体=床面積合計80㎡以上 / 改修・特定の工作物=請負税込100万円以上 / 総トン数20t以上の船舶
根拠 石綿則3条・大防法18条の15第1項 石綿則4条の2・大防法18条の15第6項

厚労省の公式FAQも「建築時期、規模にかかわらず建築物・工作物・船舶の解体・改修工事を行う際は石綿含有建材の有無について調査する必要があります」と明言しています。

「100万円」の数え方 — 実務で揉める3点

報告基準の100万円は、見積書の書き方しだいで超えたり超えなかったりする金額ではありません。公式FAQ(システムFAQ Q5-12)の原文はこうです。

「請負代金の合計」とは、材料費も含めた当該解体等工事全体の請負代金の額をいい、消費税を含む額です。ただし、事前調査の費用は含みません。

  1. 税込で判定 — 税抜98万円の工事は税込108万円前後で対象です
  2. 材料費・仮設費も含む — 厚労省Q&Aは「改修工事費は100万円未満だが仮設工事費を含めると超える」ケースを報告対象と明答しています
  3. 事前調査・分析の費用だけは除外 — 調査費を足して100万円を超えても、それは判定に入りません

また、工事の途中で追加発注により100万円を超えた場合は、超えることが判明した時点で速やかに報告が必要です(厚労省Q&A)。

分割発注で100万円未満に割る — 条文で塞がれています

「契約を2本に分ければそれぞれ100万円未満」という発想は、Q&Aレベルの解釈ではなく省令の本則で明文的に封じられています

第一項各号に掲げる工事を同一の事業者が二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったものとみなして、同項の規定を適用する。(石綿則4条の2第4項。大防法施行規則16条の11第3項も同旨)

同じ元請が契約を分割しても合算で判定されます。なお、元請が異なる工事はそれぞれ別に調査・報告します(公式FAQ)。

80㎡基準との使い分け

自分の工事がどちらの基準かは報告義務チェッカーで30秒で判定できます。

報告対象になったら: 誰が・いつ・どうやって

報告書の書き方・様式・システムの操作は報告の実務ガイドで詳しく解説しています(報告義務の境界=本記事/報告の実務=ガイド記事、という分担です)。

報告義務がなくても残る義務

100万円未満で報告が不要でも、次は残ります。

「報告が要らない=何も残らない」ではありません。

小規模工事こそ、調査費の負担感に正面から向き合う

100万円未満の工事にとって調査費は相対的に重く感じられますが、費用は「基本料金+検体数×分析単価」の構造なので、小規模工事は検体数が少なく済む分だけ調査費も抑えやすいのが実際です。確認済み各社の実際の単価水準は費用相場の記事、依頼先の比較は調査会社の比較表をご覧ください。

よくある質問

Q. 税抜99万円の内装工事。調査は?報告は? 調査は必要です。報告は税込で判定するため、税込108万円前後となり報告も必要です。

Q. 見積が100万円ギリギリ。どちらで動くべき? 追加工事で超えた時点で速やかな報告が必要になるため、境界線上の工事は最初から報告する前提で段取りするのが安全です。報告自体に手数料はかかりません。

Q. 報告を怠るとどうなる? 労基署への不報告・虚偽報告は50万円以下の罰金、都道府県知事への不報告・虚偽報告は30万円以下の罰金の対象です。詳細は罰則の解説へ。


出典(一次情報・2026年7月12日確認)

法令の確認日: 2026年7月12日(e-Gov現行条文・公式資料と照合)