結論から。2006年(平成18年)9月1日以降に着工したことを、確認済証・竣工図・設計図などの書面で確認できる場合、石綿(アスベスト)なしと判断して、調査をその確認で終了できます。これが原則です。ただし2つ注意があります。①「調査が不要になる」のではなく、着工日の書面確認そのものが法令上の事前調査として扱われる(通達の言葉では「事前調査を行ったものとみなす」)という制度であること。②ガスケット等を使う一部の産業設備には2006年9月1日とは別の基準日があること(本文後半で解説)。

この区別は言葉遊びではありません。「不要」と誤解すると、残っている義務(記録・掲示・報告)を落として違反することになるからです。この記事では、正しい条件と残る義務を条文ベースで整理します。

なぜ「2006年9月1日」が基準なのか

労働安全衛生法施行令の改正(平成18年政令第257号)により、2006年9月1日から、石綿および重量0.1%を超えて石綿を含む製剤等の製造・輸入・譲渡・提供・使用が全面的に禁止されました(安衛法55条・安衛令16条)。それ以前は「1%超」が規制ラインだったのが、この日を境に事実上ゼロ(0.1%超)になったため、この日以降に着工した建築物・工作物には石綿含有建材が使われていないとみなせる、というのが制度の根拠です。

「調査不要」ではない — 正確な仕組み

根拠条文は2系統あります。

ポイントは3つです。

  1. 書面で確認できることが絶対条件。「築年数的に2006年より後のはず」「登記上そう見える」では使えません
  2. この方法による場合、有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による調査は不要です(石綿則3条4項が「前項各号に規定する場合を除き」と明記)。書面確認は施工業者自身で行えます
  3. 確認した日が「調査終了日」になります。通達は確認した文書の写しの保存が望ましいとしています

「確認できる書面」は何か

条文の文言は「設計図書等の文書(電磁的記録を含む)」。環境省・厚労省の徹底マニュアルは次を例示しています。

発注者側は、設計図書や建築確認申請の副本等を施工業者に提供することが公式リーフレットでも推奨されています。書面がどうしても見つからない場合は、この特例は使えず、通常どおりの事前調査(書面+目視、必要なら分析)になります。

それでも残る3つの義務

着工日確認で調査を終了しても、次は残ります。「不要」と誤解した人が落とすのはここです。

義務 内容
記録の作成・3年保存 事業者名・作業場所と工事概要・調査終了日・着工日等の記録(石綿則3条7項。この場合は記録事項が1〜4号に限定される)
作業場での掲示 調査終了日・調査結果の概要等(石綿則3条8項)
結果報告 解体80㎡以上・改修等請負100万円以上などの規模なら報告が必要(電子報告システムが原則)。報告事項は簡略化される(材料ごとの有無・調査者氏名等は不要)が、報告そのものは免除されない

徹底マニュアルのフロー図にも「新築工事の着工日が平成18(2006)年9月1日以降であっても報告必要」と注記されています。報告の実務は報告書の書き方・電子報告の流れ、対象かどうかは報告義務チェッカーで確認できます。

実務の落とし穴

増改築のある建物

事前調査の対象は「解体等の作業に係る部分」です。本体が2006年9月1日以降でも、工事範囲に2006年9月1日より前に造られた部分(旧棟・過去の増改築部分)が含まれる場合、その部分についてはこの特例は使えません。大防法側の条文も「当該建築物等以外の建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴わないものである場合」に限定しています。逆に、2006年9月1日以降に増築した部分のみを工事する場合は、その部分単位で判断できます(マニュアルは「建築物・工作物(又はその部分)」と記載)。

工作物・設備の例外(ガスケット等)

工作物の基準日も建築物と同じ平成18年9月1日ですが、ガスケット・グランドパッキンを使う一部の産業設備には特例があり、着工日に加えて部品の設置日の確認が必要です(非鉄金属製造業の設備=平成19年10月1日以降設置、鉄鋼業=平成21年4月1日以降、化学工業のグランドパッキン=平成23年3月1日以降・ガスケット=平成24年3月1日以降、など。石綿則3条3項4〜8号)。プラント系の改修では「2006年以降だからOK」と即断しないでください。

2006年9月1日より前に着工した建物

通常の事前調査フロー(書面→目視→判断できなければ分析 or みなし)の対象です。なお、規制は2006年に一気に始まったわけではなく段階的に強化されてきたため、「2006年より前=必ず石綿がある」わけでもありません。分析で白黒をつける選択肢は費用相場の記事で扱っています。

書面確認ごと業者に任せることもできる

「確認済証がどこにあるか分からない」「増改築の履歴が複雑」という場合は、書面調査の代行ごと調査会社に依頼するのが早道です。調査会社の比較・見積もりから、書面調査対応の会社を確認できます。

よくある質問

Q. 築年数(登記・不動産資料)しか分からない場合は? 着工日を「設計図書等の文書」で確認できない以上、この特例は使えません。通常の事前調査を行ってください。

Q. 確認済証を紛失した場合は? 建築確認の台帳記載事項証明を自治体で取得できる場合があります。それも難しければ通常の調査です。

Q. 2006年9月1日以降の建物でも報告は必要? 規模基準(解体80㎡以上/改修等100万円以上)に該当すれば必要です。報告事項が簡略化されるだけで、報告義務は残ります。


出典(一次情報・2026年7月12日確認)

法令の確認日: 2026年7月12日(e-Gov現行条文・公式資料と照合)